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2024/11/24

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サクリファイス　⑤

満月の子発覚辺りの話。
ユーリ特殊話。

CPレイユリでしょうかｗ ：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：：



『サクリファイス』　⑤




「風邪や流行り病の兆候はない。体調の変化か体への何か負担やストレス、または疲労による熱、ねぇ」

朝になって応診してもらった見立てはそうだった。
変な病ではなかったと安心すべきか無茶しすぎだと言うべきか。
医者は旅の疲れが一気に出たのではないかと話をして、解熱の薬と栄養あるものを食べさせよく休養させるよう伝えてから帰っていった。疲れた素振りすら見せてなかったからギリギリまで我慢していたに違いない。カロルもいつもより早めに起きてきて、心配そうにユーリに付き添っていた。

「ユーリ、大丈夫かなぁ」
「大丈夫よ、青年はがんばりすぎたみたいだけだし」
「やっぱ僕が頼りないから…」
「違うわよ。ここまで我慢しちゃうのがいけないのよね。逆に心配かけちゃうってことがわかってないんだから」
「うん。でもやっぱ相談してくれるように、僕、強くならなきゃ」
「そ？少年は今でも十分がんばり屋さんよ。それよりもみんな誘って朝ごはん食べてきてちょーだい？で、一緒にユーリの分のおかゆもおかみさんに頼んできてくれると助かるんだけど」
「わかった。いってくるね。ユーリのこと、よろしく！」
「はいはーい。お前さん、ご飯はいかないのかい？」
「バウッ」

ベッドの横から定位置から動こうとしないラピードの頭を軽く撫でて、カロルにラピードのご飯も追加でお願いした。
そうして送り出した後、額に置いていたタオルに再び手をやるとだいぶ温くなっていたので、それを氷水に浸し、よく絞ってから再び乗せ、もう別のタオルで首元を流れる汗を拭った。

「ん～…汗もかいてるみたいだから着替え、着替えっと」

ユーリの荷物から適当にいつもの黒いシャツを取り出してベッド端に座り、そっと上半身を抱き起こした。そして汗に濡れたシャツに手をかけた。いつも軽く開けてシャツを着ているが、改めて肌蹴させると胸元の白さに、失っているはずの心臓がどきどきと動悸がする気がする。

「う～ん、青年の色気はおっさんには毒だわね…」

それでも目が離せないのは性分だ。思わず息が荒くなりそうになったとき、青い影が視界の端から現れた。

「バゥワゥ！」

がぷり。

「えーっと…わんこ？」
「ウ゛～～～」

ユーリにシャツにかけていた手首をラピードに咬まれて動くに動けない。そして微妙に痛い。
隻眼の眼が本気であることが見て取れて、がっくりとその気も失せてしまった。そしてこの状況を打開できるのは目の前で寝ている、この犬のご主人のみだろう。

「せ～ねんっ！せ～ね～ん！お願いだから少しだけでいいから目ぇ覚ましてぇ！」
「…ん…」
「わんこ！もういけないこと考えないから、お願いだから放してよ～」
「ワン！」

威嚇のような吼えとともに開放されると手首にはくっきりと歯型がついていた。それがラピードの本気を物語っていた。ふーふーっと息を吹きかけて痛む手首を手当てしてると、もう片方の腕で支えていた体が僅かながら動いた。

「…ら、ピー…？」
「お、青年？目ぇ覚ましてくれた？」
「お、さ…」

ぼんやりと開いた目が熱でうるうると潤んでいて力がないが、ひとまず目を覚ましてくれたことにホッとした。

「青年。だるいだろうけど、いっぱい汗かいたみたいだからシャツ着替えてくれない？これ以上手を出すとまたわんこに咬まれちゃうから」
「ん…あぁ…」

もそもそと緩慢な動きで差し出したシャツに着替えてくれたことで一段落した。

「…どれくらい寝て…」
「まだ、一晩。さっきお医者さんに診てもらったけど、体の疲れとかなんとか。無理しちゃダメでしょ。少年も心配してたわよ」
「…わりぃ」
「そう思うなら今度は倒れる前に休んでちょーだい」
「…善処する…。エステルは？」
「嬢ちゃんならまだ起きてきてないみたいだけど、熱とか不調はないみたいだけど。何かあったの？」
「いや…」
「話ならまた良くなってから聞くから、今は寝ちゃいなさい。あ、でももう少ししたら少年がおかゆ持ってきてくれるからそのときはまた起きてね」
「…はは」

再び枕に頭を沈めて、少しとはいえ話をしたことに疲れたのかまたその目蓋を閉じて、すーっと眠りに入っていった。
脱いだシャツをくるくるとまとめて下に置いた。ラピードもまた安心したのか、くわっとあくびをしたかと思うと伏せて丸くなっていた。
安心したせいかレイブンもまた眠気が襲ってきた。
カロルがにぎやかにリタとともにおかゆを運んでくるまでもう少し。


⑥に続く。。。

[8回]

2010/09/13 TOV　長編① Trackback() Comment(0)

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