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満月の子発覚辺りの話。
ユーリがちょっと特殊能力設定です。
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『サクリファイス』 ③
周り寝静まった夜、覚束ない足音とともに部屋に誰かが入ってきた。
気配にいち早く目を覚ましたレイブンが暗闇に沈んだ人影に話しかけた。
「あんまり夜更かしはいけないわよ。…青年?」
思い当たる人物なんてユーリ以外いなかったので検討をつけて軽い調子で聞いた。だがなんの反応がないことに身を起こして見やる。
「ユー、」
「っ…おっさん、わりぃ、…手ぇ貸してくれ」
重なるように絞り出されたのは枯れた声でそれと同時に前のめりに体が傾いだ。
「え、って…えぇ!?」
慌ててベッドから降りて駆けつければ、エステルを腕に横抱きしたまま膝が崩れるのを咄嗟に支えた。
よくわからない状況だがユーリの腕の中のエステルの様子を覗けば、目に見えるところには外傷はなくただ眠っているようにも見える。
「ちょっと。青年。どーゆうこと?嬢ちゃんはどしたのよ?」
「あぁ…、甲板で話してたら倒れた。疲れが溜まってたんだろ」
「まぁ、ここんとこいろいろあったからなねぇ。青年もなんだか顔色良くないわよ?」
「はっ…俺のことはいいから悪ぃがエステルを運んでもらってもいいか?」
「別にいぃけど…」
ちらりと顔を覗き込めばユーリにしては珍しくあまり余裕がない様子。エステル一人を甲板から運んできただけにしては重い息をついてどこか苦しそうだ。なにか事情を知っていそうだが、追求は後にすることにしてまずはエステルを休ませるためにユーリからその細身を受け取る。
ただ受け取るときに触れたユーリの手がいつもより熱い気がした。
「はいはい、おっさんが隣の部屋にお願いしてくるから、青年はベッドで休んでなさいな」
「あぁ、…頼むわ」
「青年に頼まれちゃ~嫌とは言えないわね。ほら、おっさんが寝てたとこ、ぬくくていいわよ」
のろのろと動き出すユーリを横目に隣部屋、倒れたジュディスに付き添っているカロルとリタの元へいく。また意識不明者を連れて行くと驚かれそうだが、エステルが倒れたともなればリタが黙ってはいまい。幸い、負傷しているわけでもなさそうなので任せても大丈夫だろう。
案の定、部屋を訪れればカロルもリタも驚いて騒いだが、予想通りにレイブンの腕からエステルをぶん取って即座に看病を始めた。そんなリタをフォローするカロルもいれば問題もあるまい。
エステルを任せた後、部屋に戻ればユーリがベッドの上でぐったり横になっていた。たどり着いたまま意識を失ったのか掛け毛布が肌蹴たままだ。それを肩まで引き上げて額に手を置くと予想通り熱かった。
いつも余裕があるようにしているユーリがここまで弱っているのを見るのは初めてである。
レイブンはベッドサイドにイスを引き寄せ座りながらまじまじと見ると、やや頬が火照り苦しそうに眉は顰められていた。先ほど触れた手の熱さを思い出し額に手を当てる。
「あついじゃないの、青年。どんだけ我慢してたのよ」
首元にも手を当てる。
額と同じく熱さは感じるものの扁桃腺が腫れてるような感じは受けない。
そこから手を離し、懐から出した手拭いで噴き出す汗を拭いた。
しっとりと濡れた肌と生き物のように艶めいて貼り付く髪はいつも以上に色っぽい。
まさかこんなときまで手を出すわけにはいかない、と生唾を呑んで我慢して赤い頬を優しく撫でた。
氷とタオルを取ってこようと席を立とうしたとき掠れた声とともにうっすらと瞼が開いた。
「…おっ、さん」
「青年、苦しいとこない?ないなら熱が高いんだから寝ちゃいなさい」
良くなったらいろいろ聞くからね、と優しく諭すとユーリは瞼を閉じ、すぅと眠りに落ちていった。
再び寝入ったことを確認して席を立とうとしたら、くんと裾がひっぱられる。
「ありゃ…」
上掛けの端からこぼれたユーリの手がレイブンの服の端を掴んでいて。
振りほどけないほどの力ではない。
だが、何を思ってか掴んだユーリの手をほどき難くて席を立つのを諦めた。
④に続く。。。
(2010.1122訂正)
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